『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』の一幕で、ムードオルガンに取りついて、睨み合う瞬間がある。
ムードオルガンという、自分の気分を強制的に変えるだけの装置が、まるで銃のように相手への脅しになっている。普通武器になり得ない物が凶器になる構図は、奇妙だが面白い。
しかし改めて考えてみると、武器では無い物を武器として活用する事例は現実でもしばしば起こりうる。
少し直接的ではあるが、包丁が凶器として使われる事が挙げられる。本来ただの調理器具でしかないものだが、その鋭さによって人を攻撃する事例はドラマでも描かれがちだ。
それに、包丁のように分かりやすい特徴がなくとも、高いところから落とせば大抵の物体は危険物だ。
何となく人を傷つけるのに向いていなさそうというイメージがあるだけで、ふわふわのヌイグルミだって本当は危ないのかもしれない。
ここまで考えて新たに気付いた。ムードオルガンによって直接的に攻撃するのではなく、あくまでも使用者自身が攻撃する手段であることは、他の危険物の例とは異なるとも言える。
ムードオルガンは使用者を武器化するための道具であるとも思えてきた。
使用者自体を武器化するものは現実に存在するのだろうか?
可能性があるとしたら、誤った情報や偏見などかもしれない。
これらは物理的な形を伴わないため、相手を直接攻撃する方法にはなりえない。だが、様々な要因により勘違いしてしまい、相手を傷付けてしまうということもある。その場合、誤った情報は現実に作用し使用者を武器化したのだと、言っても良い気がする。
影響を受けた結果だけが現実に存在するということだ。
何となく社会的な話に帰結してしまって興冷めなので、小気味よい歌を結びとする。
【大阪本町糸屋の娘 姉十六妹十四 諸国大名は弓矢で殺す 糸屋の娘は目で殺す】
美しい娘の視線は弓矢に並ぶくらい恐ろしいということだった。

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